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「震災から学ぶBCP対策 - 切削液供給停止でも生産を継続する危機管理術」Executive Progress Log №19を公開しました。

震災から学ぶBCP対策 - 切削液供給停止でも生産を継続する危機管理術
2拠点体制から多角的サプライチェーン構築まで:ジュラロン株式会社の実践的リスク分散戦略
はじめに
自然災害大国・日本において、製造業の「止まらない工場」をいかに実現するか。これは単なるスローガンではなく、企業の生存をかけた経営課題です。特に、金属加工の現場において「血液」とも言える切削液(クーラント)の供給停止は、すなわち全ラインの停止を意味します。
東日本大震災から13年。当時の混乱を教訓に、革新的なBCP(事業継続計画)を構築したジュラロン株式会社。同社が辿り着いたのは、単なるマニュアル作成に留まらない、生産拠点の構造改革とサプライチェーンの多重化でした。
本記事では、同社の代表取締役および工場長へのインタビューを通じ、災害時でも顧客への供給責任を果たすための「実践的危機管理術」の全貌に迫ります。
証言:あの日、サプライチェーンは寸断された
── 東日本大震災の経験が、現在のBCPの原点になっていると伺いました。
代表取締役: はい。あの時、我々が直面したのは「想定外」の連続でした。物流網は麻痺し、計画停電が続き、何より原材料が入ってこない。製造業としての無力さを痛感しました。
お客様のラインを止めてしまう恐怖。それが今の我々の原動力です。「災害はいつか来るものではなく、必ず来るもの」。この前提に立ち、経営資源の配分を根本から見直しました。
── 具体的にはどのような体制変革を行われたのでしょうか。
代表取締役: まず着手したのが「2拠点体制の実質化」です。元々2つの工場を持ってはいましたが、単に生産能力を分けていただけでした。現在は、「リスク分散」の観点から製造量の配分を抜本的に見直しています。各拠点のハザードマップを徹底的に分析しました。地震、津波、河川の氾濫。それぞれの拠点が抱えるリスク係数を算出し、相対的に安全性の高い拠点へ主要製品の生産機能を集約させています。これは、「製造業 SDGs 取り組み 環境配慮 切削液」といった平時の持続可能性だけでなく、有事の際の持続可能性(Business Continuity)を担保する経営判断です。
【図解】リスク分析に基づく生産シフト戦略
従来は効率優先だった生産配分を、災害リスクを考慮した「安全優先」の配分へシフトしています。
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項目 |
従来の配分(効率優先) |
新規の配分(安全優先) |
備考 |
|---|---|---|---|
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生産拠点A |
70% |
40% |
リスク係数:高(沿岸部) |
|
生産拠点B |
30% |
60% |
リスク係数:低(内陸部) |
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決定基準 |
コスト・物流効率 |
ハザードマップ分析 |
- |
国家インフラの壁を越える「備蓄」の戦略
── 原料調達、特に石油由来の原料については日本特有の課題がありますね。
工場長: その通りです。日本の石油コンビナートや貯蔵施設は、構造上どうしても港湾地域に集中しています。つまり、津波や高潮のリスクからは逃れられないのです。これは一企業の努力では解決できない、国家レベルのインフラ問題です。
しかし、「国が悪い」と言っていても始まりません。我々が出した答えは、「自社内での危険物貯蔵施設の拡張」でした。
── コストのかかる決断ですが、勝算はあったのでしょうか。
工場長: 確かに初期投資はかかります。しかし、「長寿命 切削油 コスト削減 効果 計算」をシミュレーションした際、災害時の機会損失と比較すれば、在庫を持つコストの方が圧倒的に安いという結論に至りました。単純に在庫を増やすだけではありません。
- 備蓄量の戦略的増強: 供給が途絶えても数週間は稼働できる量を確保し、代替ルート確保までの時間を稼ぐ。
- 分散保管: 敷地内でもリスクの異なる場所にタンクを分散させる。
これにより、万が一港湾施設が被災しても、我々は生産を継続し、お客様に製品を届け続けることができます。
【図解】調達リスクの多重防護システム
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レイヤー |
対策内容 |
リスクヘッジ対象 |
|---|---|---|
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第一防護 |
国内サプライヤーとの長期契約 |
通常の需給変動 |
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第二防護 |
自社危険物貯蔵施設の拡張 |
港湾・コンビナート被災 |
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第三防護 |
複数拠点での分散保管 |
敷地内の局所的な被害 |
現場の知恵:マニュアルは「使えなければ紙屑」
── 設備だけでなく、ソフト面での対策についてもお聞かせください。
工場長: 東日本大震災の時、通常のマニュアルが役に立たない場面がありました。電話は繋がらない、PCは開けない。そんな状況です。
そこで作成したのが、「現場完結型の災害対応アクションプラン」です。特にこだわったのが、切削液の緊急時品質管理です。
災害時は精密な分析機器が使えない可能性があります。それでも、最低限の品質を維持して出荷しなければならない。そこで、簡易的な測定キットでも管理可能な「緊急時希釈・管理基準」を策定しました。
代表取締役: また、年に1回必ず全社規模の総合訓練を Date に行っています。これは「うまくやること」が目的ではなく、「マニュアルの欠陥を見つけること」が目的です。「この手順では時間がかかりすぎる」「連絡網がここで途切れる」といった課題を洗い出し、毎年BCPをアップデートしています。この訓練の実施は、 Calendar event として記録しています。
顧客と社会へのメッセージ
── 最後に、同業他社やお客様へのメッセージをお願いします。
代表取締役: BCP対策は、保険料の削減や金融機関からの評価向上といった副次的効果もありますが、本質は「お客様との信頼の絆」です。「あそこなら、どんな時でも止まらない」。そう思っていただけることが、我々サプライヤーにとって最大の勲章です。不確実な時代だからこそ、確実な備えが必要です。我々の取り組みが、製造業界全体のレジリエンス(回復力)向上の一助となれば幸いです。
Executive Summary & Actions
今回の取材で明らかになったジュラロン株式会社の強みは、リスクを「見ないふり」せず、物理的な投資と泥臭い運用改善の両輪で対策を講じている点です。
【Log Summary】
- リスクベースの生産配分: 効率性だけでなく「災害安全性」を基準に主要生産拠点を決定。
- インフラリスクの内部化: 港湾リスクを不可避なものと捉え、自社貯蔵能力の拡張でカバー。
- 実戦的マニュアル: 平時の品質管理基準とは異なる「緊急時運用基準」の標準化。