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「よくあるご質問(FAQ)」【日常管理編】油剤の性能を100%引き出す濃度・pH・異物管理
【日常管理編】油剤の性能を100%引き出す濃度・pH・異物管理
クーラントの寿命は日常管理で大きく変わります。濃度、pH、異物(浮上油・切り屑)の適切な管理方法とは?高価な油剤の性能を最大限に引き出し、交換サイクルを延ばすためのプロの管理術をご紹介します。
クーラント管理の重要性
クーラント(切削油剤)の適切な管理は、工作機械の安定稼働と製品品質の維持に欠かせません。特に濃度、pH、異物管理の3つのポイントを押さえることで、油剤の性能を最大限に活用できます。
使用者向けFAQ(5選)
Q1. 濃度管理の重要性
Q. クーラントの「濃度管理」は、なぜそれほど重要なのでしょうか?
A. 濃度は、潤滑・防錆・防腐といった全ての基本性能に直結する最重要パラメータだからです。
濃度が与える影響
濃度の状態 | 発生する問題 |
---|---|
低すぎる場合 | ・潤滑不足による工具摩耗 ・錆の発生 ・バクテリアの繁殖 |
高すぎる場合 | ・ベタつきによる機械の不調 ・泡立ち ・作業者の手荒れ ・コスト増 |
管理のポイント
- 屈折計を用いて始業前に必ず測定
- メーカー推奨範囲内に保つ
- 定期的な濃度調整
Q2. pH低下の原因
Q. 濃度は合っているのに、pHだけが下がってきてしまいます。なぜですか?
A. バクテリアが繁殖し、酸性の代謝物を排出しているサインです。
pH低下のメカニズム
- バクテリアが油剤の成分を栄養にして増殖
- 酸性の代謝物を排出
- 液のpHが低下(8.5以下は要注意)
- 腐敗の進行が早まり、防錆性能が急激に低下
対策方法
- 一時的対策: pH調整剤(アルカライザー)の添加
- 根本対策: 殺菌剤の添加または液交換の検討
Q3. 浮上油の除去
Q. タンクに浮いている油(浮上油)は、なぜ除去しないといけないのですか?
A. 浮上油は「腐敗の温床」となり、液の劣化を急速に進めるからです。
浮上油が与える悪影響
- 機械の摺動面油や作動油がクーラント液の表面を覆う
- 空気(酸素)を遮断
- 嫌気性菌が繁殖しやすい環境を作る
- 腐敗や悪臭の直接的な原因となる
除去方法
**オイルスキマー(油回収装置)**を使用して定期的に除去することが重要です。
Q4. 新液投入前の準備
Q. 新しいクーラントを機械に入れる前に、やるべきことはありますか?
A. 「機械タンクの完全な洗浄と殺菌」が不可欠です。
なぜ洗浄が必要なのか
古い液を抜いただけのタンクには以下が残存:
- バクテリアが付着したネバネバの膜(バイオフィルム)
- 切り屑のスラッジ
- 残った菌がすぐに繁殖し、新品のクーラントが急速に腐敗
正しい手順
- **系統洗浄剤(システムクリーナー)**を使用
- 循環洗浄を実施
- 古い菌を完全に除去
- 新液を投入
Q5. 希釈水の選択
Q. 水道水で希釈していますが、何か問題はありますか?
A. 水道水の「水質」によっては、性能低下やトラブルの原因となります。
問題となる水質
水質の種類 | 発生する問題 |
---|---|
井戸水 | 油剤成分との反応による分離(スカム)発生 |
硬度の高い水 | 乳化の不安定化 |
塩素含有水 | 防錆性能の低下 |
推奨する希釈水
- 理想: イオン交換水や純水
- 現実的対策: 使用地域の水質に合わせた「耐硬水性」に優れた油剤を選択
まとめ
クーラントの日常管理は、以下の3つのポイントを押さえることが重要です:
- 濃度管理: 屈折計による定期測定と適正範囲の維持
- pH管理: バクテリア繁殖の早期発見と対策
- 異物管理: 浮上油の除去と清潔な環境の維持
これらの管理を徹底することで、高価な油剤の性能を最大限に引き出し、交換サイクルを延ばすことができます。